型締め力は、投影面積と内圧の積で求められます。そのため、内圧が変化すると必要な型締力も変化します。今回は、ゲートの大きさが内圧変化にどれほど影響するのか、簡単なモデルを作成し、流動解析から影響度を確認したいと思います。
型締め力とは・・・
型締め力とは、充填の際に金型を閉じておくために必要な力のことで、必要な力の最大値が必要型締め力となります。この力は計算で求めることができ、投影面積と内圧の積から求められます。
投影面積には、製品部となるキャビティーと、ノズルからキャビティーに樹脂を流すためのスプルー、ランナーを含みます。
内圧はキャビティ内圧のことであり、保圧とは異なります。保圧は成形機から加えられた圧力のことであり、キャビティ内圧は製品内まで届いている圧力のことです。キャビティ内圧は、圧力損失を受けることで、保圧よりも小さい値となります。
圧力損失に起因する要因として、スプルー・ランナーの太さと長さ、そしてゲートの大きさが上げられます。
- F:必要型締力(tf・トンフォース)
- p:キャビティ内圧力(kgf/cm^2・キログラムフォース)
- A:投影面積の合計(cm^2・平方センチメートル)
解析モデル・・・
モデルは、3D-CADで単純な形状を描きました。製品部はφ100mmの厚みは5mmとし、ゲート径はφ1.0~3.0mmの3種類を準備しました。スプル部分は3モデルとも同じとしたため、ゲートサイズとあってない感はありますが、今回はゲート径の影響度を見たいため、ゲート以外は同じ形状としました。
解析条件と結果・・・
条件設定としては、ゲート径1.0でも無理な圧力がかからないよう射出時間を長めに設定し、樹脂はABSを利用しました。3モデルとも同じ流動条件としています。
解析結果は、下記の通りとなりました。
ゲート径φ1.0では、必要型締力22トンと一番小さくなりました。理由としては、ゲートが小さいほど、製品部まで届く保圧の力が弱まるため、内圧が小さくなり、必要型締力が小さくなります。
そして、φ2.0とφ3.0では、同程度の必要型締力となっていることから、両者の圧力損失にほとんど差がなく、内圧の影響だけで見れば、φ3.0のゲート型は無駄に大きいと判断できます。(ただし、ゲート径の判断材料は、これだけではないため、この結果は要因の1つに過ぎません。)
計算で型締力を算出・・・
次に、内圧と投影面積の積が本当に、解析結果と一致するのか確認してみます。
結果をまとめると…
ゲート径 | φ1.0 | φ2.0 | φ3.0 |
必要型締力(解析) | 22トン | 35トン | 36トン |
必要型締力(計算) | 22トン | 35トン | 36トン |
結果、保圧ではなく、内圧が型締力に影響していることが分かり、ゲートサイズが型締力に影響していることがわかります。また、流動解析ソフトも、同じように計算していることが分かります。
今回のモデルでは、投影面積として、スプルー部分が、製品部と重なっているため、型締力計算からは除外されます。厳密には、XY平面の金型の開きが型締力に影響するため、その観点から、スプルは型締力から除外されます。
まとめ
いかがだったでしょうか。このように、ゲート径によって、圧力損失が変わってくるため、型締め力にも影響が出て来ます。そして、必要なゲート径は、体積収縮や固化率、せん断等からも判断することとなり、選択したゲート径によっては、今回のように型締め力にも影響がでるため、設計段階でゲート径の選定は重要となってきます。
P.S.
流動解析ソフトは、とても多くの情報が得られる分、最初の頃は、どう判断すれば良いのか分からなくなります。モデルの変更や成形条件の変更をすると、その結果、どういった変化が生まれるのか、ある程度予測できるだけの知識が必要となります。私の場合、流動解析を始めた頃、成形のことが詳しくなかったため、まず、成形条件を沢山みて、なぜこういう条件となっているのか、充塡を遅くする理由、保圧を高くする理由、型温をあげる理由、等等、成形担当者に聴きながら知識を深めていきました。