【eMAXIS Slim】と【eMAXIS】、この似たような名前の商品は、どちらも三菱UFJ国際投信が取り扱っています。ただし、運用を開始した時期が違い、それぞれの手数料も異なっています。それゆえに、同系統の資産に投資をしていても、パフォーマンスに影響が出ています。
では、先進国債券インデックスと先進国株式インデックスを題材に、この【eMAXIS Slim】と【eMAXIS】の基準価格とシャープレシオを確認してみたいと思います。
eMAXISとeMAXIS Slimの基本情報
下の表のように、同じ指数に連動した投資成果をめざしています。ただし、信託報酬の差が大きく、eMAXISは高くなっています。
先進国債券 | eMAXIS先進国債券インデックス | eMAXIS Slim先進国債券インデックス |
ベンチマーク | FTSE世界国債インデックス(除く日本・円換算ベース) | |
買付手数料 | なし | |
信託財産留保額 | なし | |
解約手数料 | なし | |
信託報酬 | 0.66%以内 | 0.154%以内 |
先進国株式 | eMAXIS先進国債券インデックス | eMAXIS Slim先進国債券インデックス |
ベンチマーク | MSCIコクサイ・インデックス(円換算ベース) | |
買付手数料 | なし | |
信託財産留保額 | なし | |
解約手数料 | なし | |
信託報酬 | 0.66%以内 | 0.102%以内 |
各商品の運用開始日
eMAXIS | eMAXIS Slim |
eMAXIS 先進国債券インデックス | eMAXIS Slim 先進国債券インデックス |
eMAXIS 先進国株式インデックス | eMAXIS Slim 先進国株式インデックス |
↓ | ↓ |
2009年10月28日 | 2017年2月27日 |
eMAXISは2009年から運用していますので、10年以上の実績があります。
eMAXIS Slimは新しい商品であり、低コストを目指しているファンドだけあって、信託報酬も低く設定されています。
基準価格の推移
eMAXISとeMAXIS Slimを比較するため、運用期間の短いeMAXIS Slimの2017年2月27日に合わせてグラフ化しました。下記グラフは、2017年2月27日を100として、2020年8月26日までにどれだけ変化したかを示しています。
先進国債券インデックスの基準価格推移
2017年2月27日を100として2020年8月26日の基準価格の変化 | |
eMAXIS Slim先進国債券インデックス | 136.23% |
eMAXIS先進国株式インデックス | 133.79% |
3年半の間に、1.98%も基準価格に開きが生じています。2つの商品は、2020年7月31日の月次レポートを確認すると、「債券格付け分布」、「組入れ上位10か国・地域」、「組入れ上位5通貨」の比率が全く同じでした。となると、この差を生んだ原因としては、運用のコストが挙げられます。
先進国株式インデックスの基準価格推移
2017年2月27日を100として2020年8月26日の基準価格の変化 | |
eMAXIS Slim先進国株式インデックス | 115.13% |
eMAXIS先進国債券インデックス | 113.15% |
こちらの、先進国株式でも、3年半の間に、2.44%の開きが生じています。先進国債券の差の1.98%よりもさらに差が大きくなりました。
このように、同じ資産への投資商品は、コスト差によって基準価格に差が出てきます。自身の投資している商品と似たような新しい商品が出てきた場合は、商品の良し悪しを確認してみてはいかがでしょうか。
実質コストの比較
基準価格に差異を生んだコストに関して、信託報酬込みの実質コストを【eMAXIS】と【eMAXIS Slim】の各商品で比較してみます。(下記、グラフ)
先進国債券、先進国株式共に、【eMAXIS】の実質コストが2倍以上高くなっています。これは、とても大きな差です。
過去3年の騰落率の比較
では、次に、ベンチマークと比べて、【eMAXIS】と【eMAXIS Slim】の商品が勝っていたのかどうか確認してみます。(下記、グラフ)
先進国債券では、【eMAXIS Slim】ですら、ベンチマークに負けていたことは意外でした。
債券と株式のグラフの長さを比べてみても、株式のほうがリターンが大きいことが分かります。ただし、リターンが大きいということは、リスクも大きくなりますので、先進国株式の投資信託を購入する場合は、値動きの大きさに精神的に耐えられるかどうかが大事になってきます。
シャープレシオの比較
次に、リスクの大きさに対して効率よくリターンを上げているかを判別するため、シャープレシオを比較してみます。グラフは、過去1年間と3年間のシャープレシオを表しています。数値が高い程、取ったリスクに比べて大きなリターンが得られていることを意味します。
先進国債券
【eMAXIS】…直近1年のシャープレシオがとても高い。低リスクで、大きなリターンを得られている。 【eMAXIS Slim】…1年、3年ともにeMAXISより数値が高い。コストが低い分、リターンが増えているため、シャープレシオも高くなっています。 |
先進国株式
【eMAXIS】…直近1年のシャープレシオがとても低い。リスクがとても高かったと判断できる。 【eMAXIS Slim】…1年、3年ともにeMAXISより数値が高い。コストが低い分、リターンが増えているため、シャープレシオも高くなっています。 |
1年の基準価格の騰落率では、先進国株式より、先進国債券のほうが伸びていました。
・先進国株式…2.6%(ベンチマーク)
・先進国債券…6.8%(ベンチマーク)
1年だけで見ると、先進国債券は、シャープレシオが2.0を超えており、低リスクでとても効率よく稼げていたと言えます。
また、先進国債券では3年シャープレシオも0.7前後と、先進国株式よりかなり高くなっています。しかし、3年間の基準価格の騰落率では、先進国株式に大きく負けています。このシャープレシオは、少ないリスクで効率よく稼げたという指標なため、基準価格の騰落率とは比例しない点に注意してください。
騰落率3年で比較すると、先進国株式のほうが基準価格が伸びているわけですが、その間のシャープレシオは、eMAXIS Slimで0.3程度ですので、リスクを大きく取って、リターンを得たという評価となります。ただし、取ったリスクに対するリターンの効率としては、債券より悪いと判断できます。(ハラハラする相場で、利益を取った感じ)
まとめ
いかがでしたでしょうか。投資信託は、商品数が多く、似たような商品も数多く存在します。自分の購入している商品やこれから購入を検討する商品は、他の似た商品と比べてパフォーマンスがどれくらい違うのか比較したほうが良いと考えます。投資信託の購入は、長期での運用を考えられてると思います。
長期運用になると、コストの差がじわじわパフォーマンスに影響してきます。より良い資産運用のため、後悔の無いよう取り組んでいきたいと思います。